萎縮性膣炎(老人性膣炎)とは?かかりやすい年齢から治療方法を紹介

2023.11.29

  • フェムテック

  • 女性器形成

この記事を読んでいるあなたは

  • 萎縮性膣炎(老人性膣炎)の原因が知りたい
  • 萎縮性膣炎(老人性膣炎)はどんな人がなるの?
  • 萎縮性膣炎(老人性膣炎)になったらどうなる?

上記のように考えているかもしれません。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)とは?

コラム37-4

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は、膣や外陰部に炎症が生じる症状です。膣は通常、pH4.0前後の酸性に保たれ、常在菌とのバランスによって膣の自浄作用が機能しています。この自浄作用が雑菌や病原菌の増殖を抑える役割を果たしています。
ですが、何らかの原因でこのバランスが崩れて膣のpHが上昇すると、

  • 膣に傷ができやすくなる
  • 雑菌やウィルスが繁殖しやすい
  • 膣炎が悪化する
  • 性感染症のリスクが高まる
  • 性行為に悪影響が出る
  • 妊娠時に胎児へ影響を及ぼすことがある

などのトラブルが起こる可能性があるため、注意の必要な疾患です。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)はどの年齢に多い?

コラム37-7

萎縮性膣炎(老人性膣炎)について、「どんな年齢に多いのか?」「自分もなる可能性はあるのか?」と思う方もいらっしゃるでしょう。ここでは、萎縮性膣炎(老人性膣炎)を発症しやすい方について解説します。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は更年期や閉経後の女性に多い?

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は通常、更年期もしくは閉経後の女性に多くみられていることから老人性膣炎とも言われていました。50代以降の女性に多く発症するこの疾患は、卵巣の機能が低下しはじめる更年期女性の約40%が悩んでいるとされています。現代では平均寿命が延びているため、閉経後の女性がこの問題に直面する可能性が今後ますます高まるでしょう。

<更年期における性交痛について詳しいコラム>
更年期における性交痛とは?痛みの原因や対策方法について

若い女性にも発症することがある?

萎縮性膣炎(老人性膣炎)はかつて年齢を重ねた女性に多くみられていましたが、近年では20代や30代の女性も発症することが増えています。
具体的には以下のようなケースで、発症リスクが高まるとされています。

  • 月経不順
  • 長期間にわたる授乳
  • 女性ホルモン減らす薬剤の服用
  • 喫煙
  • 卵巣摘出術後
  • ガン治療後
  • ストレスや不摂生な生活

これらの要因に該当する場合は、若い女性でも萎縮性膣炎(老人性膣炎)を発症しやすくなるので、当てはまる場合には注意が必要です。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の治療方法

コラム37-5

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の治療方法は、症状の軽減や管理を目指すものです。ここでは、治療方法や自然治癒が可能かについて解説したいと思います。

自然治癒は可能か?

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は、自然治癒で治るものではありません。この症状の主な原因は、エストロゲン(女性ホルモン)の減少によるものであるため、持続的な治療が必要となります。放置せず、医療機関で適切な治療を受けるようにしましょう。

市販の治療薬で解決できるのか?

市販の治療薬を使用しても、萎縮性膣炎(老人性膣炎)の根本的な解決には繋がりません。かゆみ止めや痛み止めなどの使用で症状を緩和したり、抑えることはできます。しかし、その効果は一時的なもので、使用を中止すると再び症状が現れることがほとんどです。

医療機関で治療を受ける

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の主な治療方法としては、以下の方法があります。

  • 内服剤
  • 貼付剤
  • 膣錠
  • クリーム

これらの処方は、医療機関にて状態に応じたものを出してもらうようにしましょう。数日〜2週間程度で回復に向かいますが、重症の場合は1ヶ月程度かかることもあります。

名器形成(膣ヒアルロン酸)は萎縮性膣炎(老人性膣炎)に効果がある?

萎縮性膣炎がアクティブな状態で膣ヒアルロン酸注入による名器形成を行うと、炎症を悪化させてしまう恐れがあります。
ですが、治療が落ち着いた段階や、萎縮にまで至っていない段階では、予防的効果や症状改善効果が望めます。ヒアルロン酸の保水力によって、膣の壁に潤いをもたらすことが期待できるためです。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の主な症状

コラム1-1

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は、以下のような症状が見られることがあります。

  • 不正出血
  • 黄色や褐色のおりもの
  • 悪臭があるおりもの
  • 性行為中の出血や性交痛
  • 膣や外陰部に不快感や違和感
  • 膣や外陰部にかゆみ
  • 膣や外陰部に熱っぽさ
  • 膣や外陰部に痛み
  • 排尿時の痛みや頻尿
  • 膀胱炎

こうした症状を自覚した際には、医療機関を受診することをお勧めします。萎縮性膣炎(老人性膣炎)よる、かゆみや痛みから性交渉を避けるようになったり、感染症が生じるリスクを高める可能性もあるためです。また、黄色や褐色のおりものには子宮がんのリスクもあるため、特に注意が必要になります。違和感を感じたら、なるべく早めに治療を始めましょう。

<おりものについて詳しいコラム>
おりものの異常?疾患や生理周期による色・臭い・量の変化を解説

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の原因やメカニズム

女性ホルモンの生涯の分泌量

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の原因は、簡単に言えば「エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が低下」することです。ここでは、萎縮性膣炎(老人性膣炎)の症状が現れるまでを順番に解説します。

①エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が減少する

エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が減る原因として、

  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 激しい運動
  • 過度なダイエット

など複数あげられます。
しかし、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が減少する主なタイミングは、更年期や更年期の到来です。ほぼ全ての女性が経験する生理的な変化の起こる時期には、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌が減少していくようになります。そして、閉経後はエストロゲン(女性ホルモン)がほとんど分泌されないため、次に説明する「膣が乾燥や萎縮」といった問題が起こりやすくなります。


萎縮性腟炎(老人性腟炎)とは?閉経に向かって更年期の状態になると起こる??

膣が乾燥したり、萎縮する

エストロゲン(女性ホルモン)は、

  • 膣内の分泌液を促進する
  • 膣壁や膣粘膜に潤いを与える
  • 膣壁や膣粘膜の柔軟性を保つ

といった役割を担い、膣の健康に大きな影響を与えています。
ですが、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が低下すると、これらの機能も低下するようになります。その結果、コラーゲンが減少して膣内や女性器周辺が乾燥したり、萎縮するといったことが起こってしまうのです。

<閉経について詳しいコラム>
閉経は何歳くらいから?セックスライフや更年期との関係性について解説

③膣に炎症が起こる

膣や女性器周辺の乾燥や萎縮が続くと膣の乳酸桿菌も減少、細菌や雑菌が増殖して膣内は炎症や細菌感染の危険が生じやすくなります。
女性の膣は通常、おりものによる自浄作用によって、増殖した菌を体外へ排出して、そうしたリスクから体を守っています。ですが、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量低下でこの自浄作用が弱まるようになるため、萎縮性膣炎(老人性膣炎)のリスクが高まります。
さらに、乾燥や萎縮した膣は外部からの刺激に対して過敏になり、

  • 下着
  • 生理用品
  • 性行為

などで、膣内や女性器周辺に傷や出血ができやすい状態です。そうした症状は、長期化する可能性もあるので注意しましょう。

萎縮性膣炎(老人性膣炎)の日常的な対策

コラム37-9

萎縮性膣炎(老人性膣炎)は年齢を問わずにかかる疾患となってきました。よって、日頃からの対策も重要です。萎縮性膣炎(老人性膣炎)の予防や緩和のためにも試してみてください。

性交痛がある時は潤滑剤などを使用

更年期以降、性交渉が痛みを伴うと感じる女性は少なくありません。性交痛が長引くと「性交渉=痛いもの」のように体が学習し、悪化してしまうことも考えられます。そのため、萎縮性膣炎(老人性膣炎)の治療をしていても、心因的な要因が絡んで原因を解消するのに別の治療が必要になるケースもありえるでしょう。

また、コンドームが膣を傷つける原因となることもあります。コンドームでゴム擦れを起こしやすいことが原因で、痛みやかゆみを引き起こす可能性があるためです。しかし、これらの問題は潤滑剤と併用することで、緩和される可能性もあります。コンドームの使用で痛みやかゆみの頻度が高い方は、パートナーと相談してコンドームの素材の吟味や潤滑剤なども検討すると良いかもしれませんね。

デリケートゾーンを洗いすぎない

意外に思われるかもしれませんが、デリケートゾーンを過剰に洗うことは膣周りの健康によくありません。というのも、もともと膣には菌のバランスによって自浄作用が働いています。ですが、デリケートゾーンを洗いすぎると自浄作用が崩れて、膣炎を引き起こす可能性があります。萎縮性膣炎(老人性膣炎)が悪化する要因にもなるため、洗いすぎに気をつけましょう。

デリケートゾーンの適切なケア

デリケートゾーンは、生理用品や下着による摩擦、脱毛や除毛によって乾燥の出やすい部位であるため、お顔と同様に適切なケアが必要です。デリケートゾーン用の洗浄用品を使用したり、お風呂上がりにデリケートゾーンを保湿することで、乾燥以外にも黒ずみの予防にもなります。気になる方は、積極的にデリケートゾーンをケアしましょう。

デリケートゾーンの蒸れを防ぐ

デリケートゾーンは蒸れやすく、細菌やカンジダ菌が増殖しやすい環境です。蒸れることは潤うことのように思われるかもしれません。ですが、デリケートゾーンの蒸れは、膣炎の原因となる細菌やカンジダ菌が増えやすくなります。
蒸れを防ぐには、下記のような対策ができます。

  • 通気性のよい下着や衣類を着用する
  • 自分の肌に合った下着を選ぶ
  • ピッタリとした衣類は長時間着用を控える
  • おりものシートなどはこまめに交換する

これらの対策は、無理なく続けていくことが大切です。少しずつ始めていきましょう。

まとめ

コラム24-4

閉経後の女性がかかるとされている萎縮性膣炎(老人性膣炎)。最近では若い世代の方もかかりやすく、早いうちからの膣ケアが重要になってくるでしょう。ぜひこの機会にデリケートゾーンのケアを始めてみてはいかがでしょうか。
また、ヴェアリークリニックでは、名器形成(膣ヒアルロン酸)で性交痛や膣の乾燥対策といったことも行っています。人には言いにくい悩みを下半身専門クリニックへ相談にいらしてください。

この記事を監修した医師

ヴェアリークリニック院長

井上 裕章

医師プロフィール

2014年東京大学医学部卒業。外科専門研修を修了、外科専門医を取得を経て、2019年に東京大学医学部附属病院にて勤務。性器・生殖器官や大腸肛門を含む骨盤臓器、および下肢の疾患を専門とする外科診療に従事してきた。その過程で下半身の美容的な悩みを抱える患者さんから相談が多く寄せられるようになるが、下半身美容を専門的かつ総合的に診療している美容医療機関が存在しないことを知る。自身で立ち上げるために各分野の美容系クリニックにて修練を重ねたのち、2022年に「veary clinic」 を開院。自らの骨盤臓器と下肢に対する外科治療の経験および解剖の知識を生かしつつ、最善の治療を患者さんに提供している。日本外科学会認定外科専門医。日本外科学会、日本性機能学会、日本フットケア・足病医学会、日本大腸肛門病学会に所属している。