ワキガとは?ニオイの原因と治療法や対策の解説

2023.06.12

  • フェムテック

この記事を読んでいるあなたは

  • ワキガの治療法の種類を知りたい
  • ワキガ治療のおすすめを知りたい
  • ワキガと多汗症は何が違うのか知りたい

上記のように考えているかもしれません。

ワキガとは

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ワキガとは、主にワキから放たれる独特な臭いを発する疾患です。医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」や「アポクリン汗腺症」とも言います。疾患と言いましたが、体調不良を引き起こすものではなく、健康に悪影響を及ぼすことはありません。

ですが、自身の体臭が気になるあまり、自身がワキガなのではないかと心配になる方もいらっしゃるでしょう。そんな方に向けて、ここではワキガがどのような疾患なのかを詳しく説明していきます。

特有の臭いを発する

ワキガは特有の臭いを発する疾患です。明確な診断はなく、臭いの感じ方は人によって異なりますが、一般的には以下のように例えられることもあります。

  • カレーのような香辛料の臭い
  • 酢のような酸のきいた臭い
  • ミルクのような臭い
  • 鉛筆の芯のような鉄の臭い
  • 生乾きにような臭い
  • 温泉のような硫黄の臭い

このような臭いが単独で臭うこともあれば、上記の臭いが混ざりあった臭いを発していることもあります。汗臭さとは異なるため、これらの臭いがしてたらワキガのサインかもしれません。
また、ワキガの臭いの強さは、臭いのタイプによって異なります。比較的臭いが強い傾向があるとされているのは、下記の通りです。

  • カレーのような香辛料の臭い
  • 酢のような酸のきいた臭い
  • ミルクのような臭い

人によっては本人が立ち去った後も臭いが残る方もいます。不快な臭いとして認識されがちなので、ワキガであることで辛い思いをされる方も少なくありません。

<スソワキガについてのコラム>
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衣服に黄ばみ汚れが出る

衣服に黄ばみが色濃く出やすくなるのは、通常の汗よりも黄ばみの色味が濃いことが原因です。汗自体が色を帯びているため、少ない着用でも衣類に黄ばみが目立ちやすくなります。
ただし、ワキガが原因でなくても、制汗剤の成分や皮脂の蓄積などが影響して黄ばみが発生することもあります。衣類が黄ばむ具体的な原因は一概には言えませんが、ワキ以外で黄ばみが気になるなら一度制汗剤の使用を中止してもよいでしょう。

多汗症との違い

多汗症は、体温を調節するために通常よりも過剰な量の汗をかく症状を指し、全身の汗が増加する「全身性多汗症」と、特定の部位で汗の量が増える「局所多汗症」の2つの種類があります。ワキガと同様、多汗症は汗や臭いに関するトラブルからワキガと混合されがちな疾患です。ですが、これらの疾患には原因となる汗腺に違いがあります。

詳しいことは後述しますが、多汗症の原因は「エクリン腺」で、ワキガの原因は「アポクリン腺」です。これらはどちらも汗を分泌する役割を果たしていますが、汗の性質や放出の仕組みには違いがありますそのため、それぞれの疾患は治療法も異なりますが、ワキガを発症している方は多汗症を併発することがあると言われています。

そもそも汗とは

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汗とは、「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2つの汗腺から分泌されます。それぞれに役割があり、それは次の通りです。

エクリン腺(またはエクリン汗腺)

エクリン腺(またはエクリン汗腺)は、主に体温調節の役割を持つ汗腺です。気温の上昇や運動などで体温が上がると、エクリン腺は汗を分泌します。その汗が皮膚表面に出て蒸発することで、体の熱は下がり、体温が一定に保たれる仕組みです。この時に生じる汗は99%水分でできているため、無臭でサラサラしています。
さらに、味覚の刺激や精神的な緊張もエクリン腺から汗が分泌される要因です。辛いものや酸っぱいものを食べた時の反射、ストレスで不安や緊張を感じた時にもエクリン腺は活発に働きます。

また、エクリン腺は、体中に広く分布していますが、特に以下のような皮膚の厚い部分に多く存在しています。

  • 手のひら
  • 足の裏
  • 脇の下

一般的に、人間の皮膚には200万〜 500万個のエクリン腺が存在するとされていますが、その数について具体的な統計はありません。

アポクリン腺

アポクリン腺は、情緒刺激によって発汗します。後述するフェロモンとしての役割を持ち、分泌される汗は乳白色で粘り気があり、衣副に付着すると黄ばみやすくなるのが特徴です。脇を始めとして、乳首や陰部といった特定の部位に分布しています。

ワキガが臭う原因

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意外なことに思われるようですが、汗そのものは無臭であると言われています。汗自体が臭わないなら、どうしてワキガは臭うのか。ここでは、汗が出るメカニズムと共にワキガが臭う原因を紹介します。

アポクリン腺から出る汗の成分

アポクリン腺から出る汗自体は、ほとんど水分でできていることから無臭です。ですが、汗自体に臭いはなくとも、皮ふの表面に住み着いている常在菌によって汗が分解されることで臭いが生じるようになります。というのも、アポクリン腺から出る汗には、中性脂肪や脂肪酸・鉄分・尿素・タンパク質・糖質・アンモニア等の成分が含まれています。そうした汗の成分が腐敗して発生する臭いが、ワキガの正体で原因です。
※常在菌とは、バリア機能を高め肌を守る役割、有害な細菌が増殖するのを抑える役割があります。通常であれば、身体に害を与えることはありません。

皮脂腺から出る皮脂

皮膚は汗腺以外に皮脂腺という皮脂を分泌する腺があります。この皮脂は汗と混じることで臭いが強まります。原因はアポクリン腺から出る汗と同様、常在菌によって分解されると臭いを生じる成分が含まれていることです。皮脂には、脂質やタンパク質、アミノ酸などの成分が含まれ、これらの成分の酸化や腐敗が促されると過酸化脂質へ変化し、臭いを発するようになります。
加えて、アポクリン腺と皮脂腺の出口が毛穴であることから、2つの分泌物は混じりやすい状態です。臭いの原因が混ざり合うことで、ワキガの複雑で独特な臭いを作り出しています。

通気性が悪い

ワキや陰部、おへそは毛があったり、通気性も良くないことから湿度が高まりやすい箇所です。そのため、常在菌の繁殖活動が活発になり、より強い臭いへと変化します。
その他、毛に汗や皮脂が付着しやすい、拭き取りにくいといったことが分泌物の残りやすい原因です。拭き残しがあると、臭いはもちろん肌荒れの原因にもなるので、こまめにケアをしましょう。

肥満

肥満の方は大量の汗をかきやすい傾向があり、その汗がワキガの臭いを広める要因となっています。主に体温調整の役割を持つエクリン腺がサラサラとした汗を分泌して、臭いの原因となる成分を広げてしまうためです。
また、肥満体質の人は体が持つ熱の発散を脂肪によって妨げられます。体は熱を持つと汗をかきますが、熱が発散されない状態が続くとそれだけで汗の量が多くなります。そのため、衣類が汗によって湿り、雑菌や常在菌の繁殖活動が活発になるという悪循環を生み出してしまうのです。

しかし、肥満とワキガには相関性はありません。ですが、前述のようにワキガの元となる成分を広げやすいといった傾向を持つため「肥満=ワキガ」というイメージを持たれてしまうのでしょう。こうしたことから汗臭さとワキガを勘違いされる方もいらっしゃいます。

ストレスや精神的な刺激

ストレスや疲れにより自律神経が乱れると、汗の量が増えます。ホルモンバランスが乱れ、アポクリン汗腺が刺激されるためです。
特に女性は、生理中PMSの影響を受け気持ちが不安定になりやすく、イライラから暴飲暴食に走ってしまうこともあります。なるべくストレスの発散を食事に頼らないように心がけましょう。

ワキガのセルフチェック

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ワキガはデリケートな問題となるため、気づいても親しい間柄でなければ指摘しにくいものです。さらに自分の臭いに慣れているため、自覚が難しい症状とも言えます。反対に、少しの臭いを感じて、「もしかしてワキガなのでは…」と過度に不安を感じる人もいるでしょう。ここでは、手軽に確認できるセルフチェックを紹介しています。

耳の垢に粘り気がある

ワキガか判断するために、耳の垢をチェックする方法があります。耳の垢が湿っているとワキガの可能性が高いと言われています。さらに、ドロッとしたキャラメル状の耳垢であれば、ワキガの臭いが強い傾向にあるでしょう。
こうした方法でチェックできる理由としては、耳の中にもアポクリン腺が存在し、その他の器官も同様に発達している可能性があるためです。

黄ばみの汗じみができる

白いTシャツに黄ばみの汗じみができたら要注意です。アポクリン腺から分泌される汗には、リポフスチンという赤褐色の色素成分が含まれています。リポフスチンは洋服に付着すると頑固な黄ばみになり、汗じみができます。
ワキガの人はアポクリン腺の数が多く発達しているため、リポフスチンの量も多く黄ばみが濃くなりがちです。一度の着用で汗じみができる人は、ワキガの可能性が高いと言えます。

ワキ下に粉のようなものが付着する

ワキ下に白い塊のようなものがあれば、それはアポクリン腺から分泌された汗の水分が蒸発し、中の物質が結晶化したものである可能性が高いです。粉の量が多ければ、それだけアポクリン腺の数が多いと言えます。ただし、制汗剤を使用したときも白い粉のような塊ができるので、チェックするときは何もつけずにおこないましょう。

臭いもチェックしてみよう

ワキガかどうかは、間接的に臭いをチェックすることが大切です。ガーゼをワキに5分間ほど挟み、臭いをチェックしてみましょう。カレーのような臭いや、鉛筆の芯のような臭いがあればワキガ傾向のため要注意です。

ワキガを発症する原因

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発汗量が多くても臭いを発しない人がいる一方、汗をあまりかかない体質にもかかわらずワキガを発症する人もいます。まずは、ワキガを引き起こす原因をチェックしていきましょう。

遺伝

ワキガは遺伝する可能性が高い疾患です。アポクリン腺は優勢性遺伝のため、両親もしくは片親がワキガであれば、子どもも同じ体質を受け継ぎやすくなります。その確立は、両親どちらかがワキガなら50%、両親ともワキガなら80%です。
その他、アポクリン腺の数や大きさが影響するため、前述したようにアポクリン腺の数が多く、発達していればワキガを発症する可能性は高まります。汗腺は生まれつき数が決まっているので、汗腺が様々な要因で大きくなることはあっても、数が多くなることも少なくなることもありません。

食生活の乱れ

食生活の乱れはワキガのトリガーになりえます。特に普段からジャンクフード中心の生活をしている人は注意しましょう。肉類や揚げ物のように動物性の脂肪を多く摂取していると、アポクリン腺や皮脂腺が活発になるとも言われています。ワキガが気になる方は、野菜や大豆製品を中心とした和食を意識してみてください。
また、にんにくなどの臭いが強い食べ物も汗に影響が出ます。ワキガでなくとも体臭として出てしまうので、気になる方は量や頻度を減らしてみることをおすすめします。

性ホルモンとの関係

思春期を迎えるとアポクリン腺は発達しやすくなります。
そして、アポクリン腺から分泌される汗は、フェロモンとしての役割があります。性を刺激する作用があるとも言われるアポクリン腺は「性腺」とも呼ばれ、もともとは異性を魅了する「いい臭い」であり「魅力的な臭い」を分泌する器官です。人に対して魅力を与える役割を持つため、アポクリン腺から出る汗は必ずしも悪いものではありません。ですが、その感じ方には個人差があり、時として不快な臭いと取られてしまうことがあるのです。

ワキガの治療

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ワキガは自力で完治させることは不可能といえます。なぜなら、アポクリン腺の数は誕生時に決まっており、増やしたり減らしたりはできないためです。そのため、完治させるためには医療機関での治療が必要になります。

もし、

  • こまめなケアが面倒だと感じる
  • 人との距離が近い空間で常に臭いを心配
  • ケアに振り回される生活

であれば専門医の治療もおすすめです。臭いをしっかり解消できるため、臭いに対するストレスを軽減できます。以下、ワキガ治療の一例です。

ボトックス

ワキに「ボツリヌストキシン」という成分を注射し、エクリン腺の働きを抑え汗の分泌を抑制する治療方法です。汗の分泌を抑えることで、ドライな状態を保ち菌が繁殖するのを抑える効果が期待できます。手術の中でも、手術時間が短く、費用も比較的リーズナブルに受けられます。
ただし、効果は永久的ではありません。夏場だけなど、時期によって臭いが気になる人におすすめです。

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外用薬・内服薬

一時的な処方であれば、外用薬や内服薬で対応できます。
外用薬は、発汗を少なくするもしくは、皮ふ表面の雑菌を除去し症状を緩和させる治療方法です。医療用の制汗剤のような「パースピレックス」や汗腺を塞ぐ「塩化アルミニウム液」を使用し、症状を緩和します。市販の制汗剤よりも高い効果を期待できるのがメリットであり、ほかの治療法と比較し試しやすい治療法です。
内服薬では、神経伝達物質「アセチルコリン」を阻害し、一時的に発汗を抑制します。ただし1回の服用で効果は4〜5時間です。日中の臭いを抑えるために、数回にわたり服用しなければなりません。

レーザー治療

マイクロ波をワキに照射することで、臭いの原因となるアポクリン腺を破壊する治療法です。手術とは異なり、傷跡が残らないことから手術時間やダウンタイムが短いのが利点です。1回の手術で半永久的に効果を発揮することもあります。ただし、値段が高額になりやすいのが難点です。

剪除法手術(皮弁法)

メスを使い、医師がアポクリン腺を一つひとつ丁寧に取り除く治療方法です。そのため、1回の手術で臭いや汗の悩みを解消できます。
ただし、皮ふを部分的に除去するため、皮ふに穴が開いたり、変色したり見た目の満足感が得られないこともあります。
また、皮ふが薄くなることで、乾燥から肌を守るため皮脂分泌がかえって活発化し、皮脂が臭いを発するケースもあるのです。高い効果を求める方にはおすすめですが、リスクがあることは覚えておきましょう。

ワキガの対策

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臭いを落ち着かせ臭いレベルを下げることは可能です。ここでは、臭いを落ち着かせるための生活習慣や、ワキガ体質を変える治療法をご紹介します。

軽度のワキガであれば、セルフケアである程度の臭いは抑えられます。ただし、セルフケアを実践しても臭いが改善されなければ、専門医の受診を検討しましょう。

生活習慣の見直し

生活習慣の乱れは臭いを悪化させます。以下の点を意識し、臭いの程度を抑えましょう。

  • お肉を控え魚や野菜を中心とした食生活を心がける
  • タバコ・アルコールを控える
  • 適度な運動で汗を流し、老廃物を排出する
  • ストレスを溜めないようにする

食生活では、和食を中心としたバランスのよい食事を心がけましょう。特にワキガの臭いに効果的な食べ物は、梅干しや海藻類などのアルカリ性の食事です。できれば、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEを含む食材も取り入れましょう。緑黄色野菜や果物、玄米などがおすすめです。

清潔感をキープする

こまめにワキ毛の処理をし、清潔さをキープするのも大切です。入浴や洗濯で分泌された汗を流したり、ワキ毛の処理を行ったり雑菌の繁殖をストップさせましょう。制汗シートや制汗剤を活用すると、清涼感が加わるため心地よく使えます。

まとめ

コラム31-5

ワキガが発症するのは遺伝的要因が大きいものの、ワキのケアを取り入れたり、食生活を見直したりするとある程度臭いは軽減できます。しかし、常にその状態をキープするためには、日々のケアを継続しなければなりません。
もし、お手入れや食生活まで手が回らない、もしくは臭いの不安を解消したいなら治療を検討しましょう。本格的な治療方法もありますが、暑くなる時期だけのようにピンポイントでケアできる、ボトックス注射のような治療方法もあります。ぜひ、本格的な暑さが始まる前に、早めに対策を立ててみましょう。

この記事を監修した医師

ヴェアリークリニック院長

井上 裕章

医師プロフィール

東京大学医学部の卒業後は外科専門研修を修了し、外科専門医を取得。性器・生殖器官や大腸肛門を含む骨盤臓器、および下肢の疾患を専門とする外科診療にあたる中で、下半身の美容的な悩みを抱える患者さんから相談が多く寄せられるようになる。その過程で、下半身美容を専門的かつ総合的に診療している美容医療機関が存在せず、それぞれの分野に分かれて別個で診療されていることを知り美容医療の道へ。最善の治療を患者さんに提供するべく、各分野の美容系クリニックでの修練を重ねたのちに、自らの骨盤臓器と下肢に対する外科治療の経験および解剖の知識を生かし、下半身に関する総合的かつ専門的な美容医療を提供する「veary clinic」 を開院へと至る。