低用量ピルとは?効果や注意すべき副作用について解説
2023.05.26
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フェムテック
この記事を読んでいるあなたは
- 低用量ピルとは?
- たくさんある低用量ピルの種類が知りたい
- 低用量ピルの効果を知りたい
上記のように考えているかもしれません。
この記事ではそんなあなたに「低用量ピルとは?効果や注意すべき副作用について解説」をお伝えしていきます。
低用量ピルとは?
低用量ピルとは、正式名称「経口避妊薬」と呼ばれる薬のことです。避妊を主な目的としており、成分には、エストロゲン(=卵胞ホルモン)とプロゲステロン(=黄体ホルモン)の2種類があります。エストロゲンと聞くと馴染みのない感じがしますが、女性ホルモンというと分かりやすでしょう。プロゲステロンは子宮内膜や子宮筋の働きを整える役割を担い、妊娠時における妊娠の維持にも必要不可欠なホルモンです。
海外では開発当初から使用されていた低用量ピルですが、日本で認可が下りたのは1999年のことです。それ以前は高用量ピルや中用量ピルのみが認可されていましたが、副作用が発生するリスクが高いデメリットがありました。
一方、低用量ピルは、配合されるホルモン量が少なく副作用も抑えられるため、現在の日本の主流です。正しく服用すれば99%以上の確率で避妊が可能で、コンドームなどよりも高い避妊効果があります。
<ピルについて、詳しいコラム>
ピルとは?その種類と特徴や副作用について解説
低用量ピルの避妊効果や副効果
低用量ピルは避妊を目的として開発された薬であり、99%以上の高い避妊効果が認められています。効果は避妊にとどまらず、月経周期の乱れを改善したり、月経痛を抑えたりする効果もあります。海外では高い普及率を誇る低用量ピルですが、日本ではまだまだ低い現状です。そのため、避妊以外の効果については知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは、低用量ピルの主な効果と副効果を3つ紹介していきます。
避妊効果
低用量ピルの主な効果は「避妊」です。前述したとおり、低用量ピルには99%以上の高い避妊効果があります。妊娠対策として一般的に知られるコンドームですが、避妊効果自体は低用量ピルよりも低く、また破れてしまう点がデメリットです。
また、相手側に委ねる部分が多く、女性側が着用を促しにくい場面もあるかと思います。その点、低用量ピルは自分の意思で服用を決定し、自分の身を自分で守ることができる方法です。
しかし、コンドームには避妊効果以外にも、性感染症を防ぐという大切な役割があるため、それぞれの効果を理解したうえで方法を選びましょう。低用量ピルは、1日1錠の服用で効果を発揮しますが万が一、1日服用を忘れてしまった場合でも、気づいた時点で速やかに服用すれば、特に緊急避妊薬を使用する必要はありません。
月経不順・月経痛・PMSの改善
低用量ピルの副効果1つ目は「月経不順・月経痛・PMSの改善」です。
月経不順
女性の中には、月経不順で悩まれる方が多くいます。定期的に月経が来ないことで、いつ来るのだろうという不安や、スケジュールを立てにくいというストレスを抱えることになります。月経不順が起こるさまざまな原因のひとつが、ホルモンバランスの乱れによるものです。ですが、低用量ピルを服用するとホルモンバランスが整い、月経不順にも改善がみられます。
月経痛
月経中の痛みも多くの女性の悩みです。月経中は「プロスタグランジン」という、子宮を収縮させる働きをもった物質が子宮内に増加します。低用量ピルには、この「プロスタグランジン」の発生を抑制する働きがあるため、月経痛の軽減に効果をもたらします。
PMS
近年浸透してきた「PMS(月経前症候群)」とは、月経前3~10日に渡り続く、身体や精神の不調を指します。PMSの時期は月経前の黄体期と重なっており、体温が高温になり、自律神経の乱れや食欲の増進が起こりやすい時期です。エストロゲンの減少やプロゲステロンの増加が起こりやすい期間であり、PMSの原因も女性ホルモンの乱れにあるといわれています。低用量ピルの服用で女性ホルモンのバランスが整い、PMSの改善にも効果があると考えられています。
がん予防
低用量ピルの副効果2つ目は「がんの予防効果」です。卵巣がんの原因は諸説ありますが、継続的な排卵が1つの原因と考えられています。
低用量ピルの服用中は排卵が抑えられるため、排卵によって卵巣が傷つくことがなくなり、結果的に卵巣がんが発生する可能性が低下するというものです。卵巣がんのリスクについては、欧米中心に多くの研究がされており、10年間の服用で50%以上のリスクを抑える効果があると考えられています。
他にも、服用中は子宮体がんによる死亡率が低下するという研究結果もあります。さらに、また別の研究では、服用後であっても子宮体がんの発生抑制効果が持続すると報告されています。
肌荒れの改善
低用量ピルの副効果3つ目は「肌荒れの改善効果」です。生理前後にできるニキビや肌荒れは、多くの女性が経験したことがあるのではないでしょうか。これらの原因の多くは、ホルモンバランスの乱れによるものです。
中でも、男性ホルモンの一種であるテストテロンの分泌が増加するとニキビができやすくなるといわれています。低用量ピルには、ホルモンバランスを整える効果や、テストテロンの分泌を抑制する効果があるため、ニキビや肌荒れなどのトラブル改善も期待できます。
低用量ピル使用時の副作用
低用量ピルは、高用量ピルや中用量ピルに比べ副作用は抑えられています。しかし、いくつか考えられる副作用があります。
頭痛・吐き気・むくみ
低用量ピルを服用し始めてからの数日間は、頭痛・吐き気・むくみなどの症状が起こることがあります。これらの症状は、身体がピルに慣れていないと起こりやすいものなので、ホルモンバランスが整い安定すれば収まることがほとんどです。
もし、症状が重い場合は、吐き気止めなどを処方してもらいましょう。また、症状が数週間続くような場合は、医師に相談のうえ、違う種類の低用量ピルを試すのもひとつの方法です。
血栓症のリスク
血栓症とは、さまざまな原因により血液が固まり、血管を塞いでしまうことで起こる病気です。発病まで無症状のケースが多く、自覚症状なしにある日突然発症するということも珍しくありません。血流の速い部位で起こるものが「動脈血栓症」と呼ばれ、代表的なものに心筋梗塞や脳梗塞が挙げられます。
一方、血流の遅い部位で起こるものは「静脈血栓症」と呼ばれ、代表的なものに肺塞栓があります。低用量ピルの服用により、血栓症のリスクが高くなることが考えられますが、その確率は心配するほど高くはないです。むしろ、非喫煙のピル服用者より、喫煙者の方が血栓症リスクが高くなっています。他にも、高血圧や糖尿病の場合も血栓症リスクが高くなるため、生活習慣を整えることが何より大切だと言えるでしょう。
低用量ピルの種類と世代・分類
低用量ピルは、そのなかに含まれる黄体ホルモンの種類によって、大きく4つの「世代」と「含まれるホルモンの量の違い」とで分類されます。それぞれの世代により特徴が異なるため、自身に合った薬を服用することが大切です。
ここでは、第一世代から第四世代まで、世代ごとの薬の種類一覧や含まれるホルモンの量の違いについて紹介していきます。
世代 | 種類 | 特徴 |
第一世代 | ルナベルLD フリウェルLD シンフェーズ |
・ノルエチステロン(=黄体ホルモン)が含まれる低用量ピル。 ・出血量の減少や生理痛の緩和に効果が出やすい。 |
第二世代 | トリキュラー ラベルフィーユ アンジュ ジェミーナ |
・レボノルゲストレル(=黄体ホルモン)が含まれる低用量ピル。 ・不正出血しにくい。 |
第三世代 | マーベロン ファボワール |
・デソゲストレル(=黄体ホルモン)が含まれる低用量ピル。 ・男性ホルモンの抑制作用が高い。 |
第四世代 | ヤーズ ヤーズフレックス |
・ドロスピレノン(=黄体ホルモン)が含まれる低用量ピル。 ・利尿作用があり、むくみにくい。 |
低用量ピルの世代
低用量ピルを服用する前に、どのような種類があって、それぞれどんな違いがあるのか知っておくことが重要です。個人によって低用量ピルを服用する目的は異なりますが、現在の症状や体調に合わせた薬が病院から処方されます。低用量ピルが分類される4つの世代は、それぞれ含まれる黄体ホルモンの種類が異なるため、効果や副作用といった点でも相違が見られます。
第一世代:ノルエチステロン
種類:ルナベルLD/フリウェルLD/シンフェーズ
「第一世代」にあたる低用量ピルには、黄体ホルモンとしてノルエチステロンが含まれます。第一世代は、低用量ピルのなかで最初に製造が認められ、月経の出血量の減少や月経痛の緩和に効果が期待できます。
また、月経困難症と呼ばれる、月経に伴う病的症状がコントロールしやすくなる点も魅力のひとつ。ルナベルLDとフリウェルLDは、子宮内膜症と月経困難症の改善目的で保険適用の薬です。この2つの薬は、製造元の違いから名称が異なりますが、含まれる成分は同じピルになります。
第二世代:レボノルゲストレル
種類:トリキュラー/ラベルフィーユ/アンジュ/ジェミーナ
「第二世代」にあたる低用量ピルには、黄体ホルモンとしてレボノルゲストレルが含まれます。第二世代の低用量ピルは、第一世代に比べエストロゲン(=卵胞ホルモン)の配合量が少なく、服用中の不正出血が起こりにくい点が特徴です。
また、月経周期が安定する効果もあるため、月経不順の改善も期待できます。ジェミーナは、月経困難症の改善目的として、第二世代で唯一保険適応の薬です。
第三世代:デソゲストレル
種類:マーベロン/ファボワール
「第三世代」にあたる低用量ピルには、黄体ホルモンとしてデソゲストレルが含まれます。デソゲストレルには、アンドロゲン(=男性ホルモン)の抑制作用があるため、皮脂の過剰分泌によるニキビの改善に効果が期待できます。他にも、男性ホルモンによる多毛症が改善されるケースもあるようです。
しかし、長期的な服用による抑うつ症状や性欲減退の副作用が見られる場合もあるため、不安がある場合は医師に相談してみましょう。ファボワールは、先発薬であるマーベロンのジェネリック医薬品のため、比較的安価です。
第四世代:ドロスピレノン
種類:ヤーズ/ヤーズフレックス
「第四世代」にあたる低用量ピルには、黄体ホルモンとしてドロスピレノンが含まれます。ホルモンに利尿作用があることから、むくみが起こりにくい点が魅力の薬です。
また、ヤーズとヤーズフレックスどちらも、子宮内膜症や月経困難症の改善目的で保険適応となっています。ヤーズフレックスは、ヤーズの長所を持ちつつ、国内で初めて連続服用が認められたLEP製剤(子宮内膜症や月経困難症の治療を目的としている薬剤)です。連続服用の場合は休養期間がないため、休薬期間中に起こりやすい骨盤痛や頭痛などのホルモン関連症状の緩和に効果が期待できます。
低用量ピルに含まれるホルモンの割合
低用量ピルには、ホルモンの量が異なる「1相性」と「3相性」があります。「2相性」も存在しますが、日本国内での取り扱いがほとんどないため、ここでは1相性と3相性の解説のみとさせていただきます。
1相性
1相性は1錠当たりのホルモンの量が変わらない錠剤です。
ホルモンの量が変わらないので、生理日を早めたり、遅らせたりするなどコントロールがしやすい上に、飲み間違えが起きにくい、ホルモン変動からくる体調変化が起きにくいというメリットがあります。
3相性
3相性は体のリズムに合わせてホルモンの量が異なる錠剤です。
メリットとして、エストロゲン摂取量が1相性と比較すると少ないこと、体のバランスに近いことから不正出血などの副作用が少ないことがあげられます。
低用量ピルの購入方法
低用量ピルはどこで購入すればいいのでしょうか?
低用量ピルは、
- 病院で処方する方法
- 個人輸入で購入する方法
上記の2つの方法があります。それぞれの購入方法について詳しく説明します。
病院で処方
低用量ピルを入手する場合、病院で医師の診察を受けてから処方してもらう必要があります。
病院での処方の手順
①病院で問診票を記入
②医師による診察
③血液検査
④低用量ピルの飲み方やリスクの説明
⑤低用量ピル処方
血液検査を行い血栓に対するリスク具合を判定します。医師の診断を受けて、低用量ピルの服用に問題がないと判断されると処方されます。病院によっては、コロナウイルスの拡大によってオンライン受診も可能です。来院せずオンラインで受診すれば、低用量ピルが処方されます。
また、低用量ピルを治療目的ではなく、避妊目的、生理を遅らせる・早める目的で使用の場合は保険適用外です。保険適用の場合3割負担で済みますが、治療目的以外は自費での購入になります。
個人輸入
低用量ピルは日本では市販が禁止されている薬剤なので、海外からの輸入によって手に入れます。個人輸入で通販サイトを利用しての購入が可能です。
個人輸入であれば、病院を受診する必要もなくネットで簡単に購入できますが、本物かどうかのリスクもあります。通販で購入した品質の悪いピルを服用し、トラブルが起こりかねません。
ピルのよくある質問
薬局で低容量ピルのは買えますか?
低用量ピルを薬局で購入することはできません。医師の処方箋があれば、調剤薬局で低用量ピルを処方してもらえますが、市販での販売はないです。低用量ピルを購入するならまずは病院を受診しましょう。避妊を失敗した際に飲むアフターピルの市販は海外で市販できるため、日本での市販を望む声も大きいですが、いまだ市販への実施に至っていません。
低容量ピルを飲み続けても問題はありませんか?
飲み続けても妊娠等には問題はありません。排卵を抑制するためのものですので、パイプカットのように生殖機能そのものをなくすものではないからです。
ただし、服用している間は定期的に検診を受けて、安全に利用できるように心がけましょう。
ピルを飲み忘れたらどうする?
気づいた時点で服用してください。その後、いつもの時間に服用し、気づいた時間といつもの服用時間が近い場合は、2錠同時に服用しても構いません。ですが、3錠以上は過剰摂取になる恐れがあるので、同時に摂取しないでください。
また、避妊効果が弱まる場合があるので、性行為の際はコンドームなどを併用しましょう。
ピルを飲んでいればコンドームつけなくて良い?
性感染症予防の観点から、ピルを飲んでいてもコンドームはパートナーに着用してもらいましょう。
まとめ
低用量ピルは、含まれる黄体ホルモンの種類によって大きく4つに分類され、それぞれの種類で特徴や効果が異なります。
個人の症状や体調によっても処方される薬は異なるため、受診前に自身の症状や改善したい点をしっかり把握しておくことが大切です。
大切な身体のことだからこそ、必ず病院を受診のうえ入手するようにしましょう。