ピルとは?種類一覧と特徴や副作用について解説
2023.05.23
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フェムテック
この記事を読んでいるあなたは
- ピルの種類について知りたい
- ピルには特徴やメリットが知りたい
- ピルの副作用やリスクを知りたい
上記のように考えているかもしれません。
この記事ではそんなあなたに「ピルとは?種類一覧と特徴や副作用について解説」までお伝えしていきます。
ピルとは
ピルとは、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2種類のホルモンが含まれている薬です。一般的には、経口避妊薬(OC)と認知されている錠剤を指す場合がほとんどでしょう。
飲み薬ですので、水またはぬるま湯で服用します。重要なのは、毎日同じ時間にピルを服用することです。そのためには、自身の生活リズムに合わせ、習慣化できる時間に服用するようにしてください。
ピルの種類と特徴
ピルには「高用量ピル・中用量ピル・低用量ピル・超低用量ピル・ミニピル・アフターピル」の6種類があり、特徴は以下の通りです。
高用量ピル | 1960年代は主要だったが、副作用のリスクが大きく今ではほとんど使用されていない。 |
中用量ピル | 生理の移動に使用。低用量よりも吐き気、頭痛など副作用が強い。 |
低用量ピル | 薬量を必要最低限に抑えており、一般的に使用されている薬剤。 |
超低用量ピル | ピルの中でも唯一、月経困難症にのみ保険が適応されている。 |
ミニピル | エストロゲンを含まないため、副作用が起きにくい。 |
アフターピル | 避妊を失敗した際に飲むピル。性行為後24時間以内に服用した場合は99%の避妊率がある。 |
それぞれ詳しく解説していきます。
高用量ピル
高用量ピルは、50 μg以上のエストロゲンが含まれる種類のピルを指します。このピルには、「100〜175 μg のエストロゲン」と「10 mg のプロゲステロン」を含んでいます。1960年にアメリカで初めて販売された高用量ピルは、女性が主体となる避妊薬として大きな反響を呼んだそうです。こうして高容量ピルは、今までにない画期的な薬として流通し始めました。
しかし、この高用量ピルは強力な効果と同時に、吐き気や血栓症を始めとする副作用が強い特徴があります。そのリスクが高さから多くの女性にとって、実際の服用は難しいものでした。後述する安全性が向上したピルが開発・処方されている現在では、高用量ピルの処方はほとんどありません。
中用量ピル
中用量ピルは、50 μgものエストロゲンが含まれる種類のピルを指します。前述の高用量ピルは、副作用が出やすくなるといったことが判明し、それを受けて中用量ピルは開発されました。エストロゲン50μg以上が含まれている高容量ピルと比較して、中用量ピルは副作用やリスクが低くなる傾向があります。高用量ピルそれでも副作用のリスクはゼロではありません。
低用量ピル
低用量ピルは、50 μg未満(30μg〜35μg)のエストロゲンが含まれる種類のピルを指します。日本では1999年に低用量ピルが認可されました。低用量ピルは、高用量ピルや中用量ピルと比較しても、エストロゲンの量が少ない特徴があります。副作用のリスクを低減されているため、現在は低用量ピルを処方されることが一般的です。低用量ピルは諸外国でも広く使用され、避妊や生理周期の安定、生理痛の改善などに用いられています。
超低用量ピル
超低用量ピルは、20μgのエストロゲンが含まれる種類のピルを指します。エストロゲンの量が少ないため、超低用量ピルは避妊薬として公式に認められていません。
しかし、超低用量ピルはいくつかのメリットがあります。まずは、一般的なピルと比べて副作用が少ないことです。エストロゲンの量が非常に控えめであるため、体への影響も軽減されています。低用量ピルの副作用が苦しく、服用を断念した方にもおすすめです。さらに、超低用量ピルは「月経困難症」や「子宮内膜症」の治療薬として、保険適用となることがあります。
月経は女性にとって切っても切れないので、その辛さを軽減するためにも長期間ピルを服用することもあるでしょう。その際、副作用が気になる方や費用の負担を軽減されたい方は、超低用量ピルを検討しても良いかもしれませんね。
ミニピル
ミニピルは、エストロゲンが含まれず、プロゲステロンのみが含まれた種類です。
エストロゲンが入っていないため、ミニピルは血栓症のリスクが大幅に軽減されています。よって、血栓症のリスクがある喫煙者を含めみ、通常のピルを使用できない方も治療法として選べるになりました。
エストロゲンが含まれていませんが、ミニピルは超低用量ピルと違い避妊薬としての効果もあります。ただし、ミニピルを避妊薬として使用する際はよりシビアな時間管理で服用しなければなりません。
アフターピル
アフターピルは、緊急避妊薬とも言います。その名の通り、緊急用のピルとして使用するため、アフターピルは普段の避妊法としては適していません。緊急避妊には以下のような方法があります。
ヤッペ法
中用量ピルである「プラノバール錠」を1回を2錠とし、12時間ごとに2回(計4錠)服用する緊急避妊法です。
性行為から72時間以内に服用する必要があり、服用する時間が早ければ早いほど避妊の確率が高くなります。あくまでも妊娠を予防するためであり、妊娠後に服用しても中絶できるものではありません。
ノルレボ法とレボノルゲストレル法
「ノルレボ錠」もしくはそのジェネリックである「レボノルゲストレル錠」を1回1錠とし、性行為から72時間以内に服用する方法です。
こちらも服用まで早ければ早いほど、避妊の確率が高まります。ジェネリックであるレボノルゲストレル錠はノルレボ錠と比べると安価で購入が可能です。
ピル種類別の効果や使用目的
ピルは、正しく服用すれば99%以上の確率で避妊が可能で、コンドームなどよりも高い避妊効果があります。
しかし、それ以外にも自身の悩みや辛い症状・トラブルに合わせてピルは処方されます。ここでは、ピル各種の使用目的などを解説します。服用をする際の参考にしてください。
中用量ピル
中用量ピルには下記のような使用目的や効果があります。
- 生理日移動
- 避妊(緊急避妊)効果
- 生理不順・生理過多などの改善効果
- 子宮内膜症の治療
- 月経困難症(重い生理痛など)の治療
- 不妊治療
正しく服用することで月経移動が可能になるので、生理に被せたくないイベントが控えている際に中用量ピルは向いています。また、前述の通り、中用量ピルは緊急避妊薬としての効果もあります。
低用量ピル
低用量ピルには下記のような使用目的や効果があります。
- 避妊効果
- ニキビ・多毛症などの肌荒れ改善効果
- 生理不順・生理過多などの改善効果
- PMSの改善効果・治療
- 子宮内膜症の治療
- 月経困難症(重い生理痛など)の治療
超低用量ピル
超低用量ピルには下記のような使用目的や効果があります。
- 生理不順・生理痛などの改善効果
- ニキビ・多毛症などの肌荒れ改善効果
- PMSの改善効果・治療
- 月経困難症(重い生理痛など)の治療
また、種類によっては120日間の連続服用が可能なものもあり、生理が最大3ヶ月に1回とすることも可能です。
ミニピル
ミニピルには下記のような使用目的や効果があります。
- 避妊効果
- PMSの改善効果・治療
- 子宮内膜症の治療
- 月経困難症(重い生理痛など)の治療
授乳中でも安全に使用できるとされるため、ミニピルは産後の避妊薬として、月経回数を減らす目的で使用されています。
ピルの種類変更のタイミング
ピルは副作用などで自分の身体に合わないこともあります。その際は服用することも可能です。服用の種類を変えるタイミングは以下の通りです。
休薬期間終了時
一般的な方法として、休薬期間(7日)を終了時にピルを切り替える方法がとられます。ピルによる避妊の効果を継続できるかつ、身体への負担が少ないため、ピルの種類を変えるにはおすすめの方法とも言えます。
真薬服用完了時
ピルは21日間有効成分が入った真薬を服用し続けて、休薬期間(7日)へと入りますが、休薬期間を経ずにそのままピル変更する方法もあります。生理(消退出血)が無い状態がないままに次のピルを服用するため、別の種類のピルに変更した際に不正出血を起こす可能性があることがデメリットです。
しかし、ピルの服用を継続しているので、排卵を抑制する効果は持続します。
休薬期間中の生理開始時
生理、ピル服用時は正確に言うと退行出血が起こり、この退行出血が始まるのと同時に服用する方法もあります。低用量ピルは生理初日から服用するという飲み方が由来です。しかし、ピルによってホルモンの量が増減してしまうことから一時的に副作用が出やすくなる可能性は高くなります。
ピルの種類別製品一覧
各製薬会社より様々なピルが出ています。主に国内で認可されているピルを一覧にしてみましたので、ご覧ください。
中用量ピル
- プラノバール
- ソフィアA
- ルテジオン
中用量ピルの種類として3種類あげましたが、ソフィアAとルテジオンは現在販売中止となっているため、中用量ピルは事実上プラノバール1種類となります。効果が高い分、エストロゲンの含有量が多いため、改善したいお悩みによっては低用量ピルが第一候補となることも多いです。
低用量ピル
- トリキュラー
- マーベロン
- アンジュ
- ラベルフィーユ
- ファボワール
- オーソM
- シンフェーズ
低容量ピルには、1シートが21錠と28錠となっているピルがあります。この違いは有効成分が含まれていない偽薬(プラセボ)があるかないかです。偽薬がないと休薬明けの飲み忘れが起こりやすい方もいらっしゃいます。習慣化するという観点からは28錠タイプのピルがおすすめですが、21錠タイプよりも費用がかさみます。
超低用量ピル
- ヤーズ
- ヤーズフレックス
- ルナベル
ヤーズヤーズフレックスの2つは有効成分が同じですが、保険適用の有無や連続服用日数が異なります。超低用量ピルとしては比較的新しい世代のピルです。
ミニピル
- ノリディ
- マイクロノア
- マイクロバル
- ノルゲストン
- セラゼッタ
- ノアルテン
- ディナゲスト
プロゲステロン単独の製剤であるため、日本国内では避妊薬としての認可はありません。
アフターピル
- ノルレボ
- レボノルゲストレル
中用量ピルとしても使用されているプラノバール以外のアフターピルが上記になります。どちらも有効成分は同じですが、先発品であるか後発品(ジェネリック)かの違いがあります。
ピル種類別の費用一覧
ピルの費用は、自費か保険適用か、クリニックによっても異なります。ここでは、一般的な自費の相場を記載しています。
中用量ピル | 月3,000〜5,000円 |
低用量ピル | 月2,500円前後 |
超低用量ピル | 月2,000〜10,000円 |
ミニピル | 月3,000円 |
アフターピル | 一回5,000円~15,000円前後 |
金額が大きく前後するのはアフターピルです。また、ヤッペ法かノルレボ法もしくはレボノルゲストレル法でも金額が前後します。
ピルの副作用について
ピルは薬ですので、種類に関係なくピルにも副作用は存在します。副作用と言うと恐ろしく感じますが、ピルを安全に服用するためにはリスクや副作用を知っておくことが重要です。
また、ピルは長期に渡って服用することもありますが、気を付けて服用ができれば、ピルは安全性の高い避妊方法と言えます。下記ではピルを服用することで起こりうる副作用を紹介します。
血栓症の可能性
血栓症は、ピルを服用する上での最大のリスクであり、最も気を付けなければならない副作用です。
ピルを服用して下記のような症状が見られた場合には、血栓ができている可能性が考えられます。
- 片方の足の痛みや腫れ
- 手足のしびれ
- 激しい頭痛
- ろれつが回らない
- 視野が狭くなる
- 胸部を押しつぶされるような痛み
血栓症は血液が固まり、血管内にできた塊が血流を塞いでしまう状態で、塊が塞ぐ場所によっては死に至る重篤な病状です。もしも症状が出た場合にはピルの服用を中止し、早めに医療機関へ検査を受けるようにしてください。
また、血栓症のリスクは、ピルの主成分であるエストロゲンが原因です。エストロゲンには血液を固まりやすくする作用があり、固まった血液をサラサラにする働きを阻害する作用もあるため、血管内で血栓が形成されやすくなります。
当然のことながらエストロゲンの量が増えるほど、血栓ができるリスクは高まります。さらに、下記のような行動や状態によって、血管内に血栓が形成されるリスクはより高くなると言われています。
- 喫煙
- 肥満
- 水分不足
- 同じ姿勢を長時間維持
上記の中でも「喫煙」は特に血栓形成のリスクを倍増させます。ピルを服用する時は禁煙をしたり、血が濃くならないようにこまめに水分を取ったり、運動を取り入れて太らないように予防を心掛けてください。
ただし、副作用が出にくいと言われる低用量ピルにおいて、血栓症の発症は年間1万人に対して3〜9人と非常に低い水準に抑えられているので、血栓症の危険性は非常に稀であると言えます。そのため、むやみに血栓症を恐れる必要はありません。しかし、血栓のできやすくなるとされる飲み始めの頃は体調の変化に気を付けて服用しましょう。
吐き気やその他体調不良
ピルはホルモン剤ですので、服用することで体内のホルモンバランスが崩れてしまうことがあります。ピルが身体に慣れるようになるまで、吐き気を筆頭に発生する可能性のある副作用は下記の通りです。
- 吐き気
- むかつき
- 頭痛
- 下腹部の痛み
- 乳房のはり
- 倦怠感
- イライラや気分の落ち込み
こうした副作用はピルの種類によって出方が異なります。初診時に処方されるピルについて医師に聞いてみたり、服用後も気になる場合は相談してみてください。
むくみや体重増加
高い保水作用を持つエストロゲンの影響によって、むくみが起こる場合があります。むくみによる体重の変化は2kgから3kgくらいと言われていますが、これはピルによって一時的に体内の水分含有量が増えている状態が原因です。
上記のようにむくみは見た目や数字の変化が出やすいので、これに対して太ったと感じる方がいます。その他にも黄体ホルモンには食欲増進作用があり、いつもより食べ過ぎてしまうことが一時的な体重増加に結びつくこともあります。
ですが、ピルの服用者全員が太るという訳ではありませんし、ピルが体重増加の直接的な原因に結び付く訳ではありません。それでも、むくみや体重増加が気になる方は、適度な食事と運動によって軽減できるので心掛けて生活しましょう。
飲み忘れで不正出血のリスク増加
ピル服用初期の段階で不正出血が見られることがあります。飲みなれるまでは不正出血が続くこともありますが、不正出血が2週間以上続く場合は医療機関へ相談し、違うピルに変更することで解決する場合もあるのでしょう。担当医と相談してピルの種類を変えてもらうのも不正出血を抑える1つの手です。
また、ピルは24時間ごとに1錠服用する薬ですが、服用を忘れることで不正出血のリスクが増えます。ピルは服用を忘れてしまうことが頻発すると、不正出血のリスク増加だけでなく、避妊目的で使用している方は避妊効果が弱くなるのでピルの飲み忘れには気を付けてください。
副作用の起こる頻度と期間
上記で起こりうるピルの副作用の紹介をいたしましたが、ピルの副作用は頻繁に起こるのか、また、副作用が起こったらどのくらい続くのかを紹介します。
副作用の起こる頻度は高いのか
副作用は人によって様々、ピルの種類によっても様々ですが、副作用としてあげられる血栓症以外の症状は「マイナートラブル」と呼ばれていて、副作用の頻度は高くありません。
血栓症に関しても頻度は高くはありませんが、ピルを服用する上では気を付けなければならない重篤な副作用ですので、リスク軽減のために最低でも半年から1年に1回の定期健診を行ってください。
また、血栓症はピルの飲み始めに起こる確率が最も高くなるので、「1か月服用し、2ヶ月休止、また再開」などのように服用の中止と再会を繰り返すと、血栓症のリスクは増加してしまうので注意しましょう。
副作用はいつから起こるのか
マイナートラブルを含めたピルの副作用は、服用開始時から起こることがあります。ピルの服用は言わば、女性ホルモンを内服している状態です。ピルの種類によっては身体に急激なホルモンバランスの変化が生じるため、ホルモンバランスの乱れへ繋がります。
よって、ピル服用の際は「低用量ピル」もしくは「超低用量ピル」から始めるのがおすすめです。ホルモンの含有量が少ない種類のピルを選択することで、急激なホルモンバランスの乱れによる副作用は起きにくいとされています。
副作用はどのくらいの期間続くのか
マイナートラブルは身体がピルに慣れるまでは続き、期間は1か月から3か月程度とされています。しかし、このマイナートラブルも2シート目(2か月目)に入る頃には良くなる方が多く、ピルを正しく使用していれば心配はいりません。
それでも血栓症のリスクが最も高い期間である服用開始時点から3か月以内は特に気を付けて服用し、ピルを服用していて辛い時や体調に変化が見られた場合には医療機関へ相談してください。
まとめ
ピルには様々な種類とそれぞれの使用用途、副作用やリスクがあることを紹介してきました。副作用やリスクはありますが、注意事項を守ったり、正しく服用することでQOLが向上するため、ぜひ選択肢の1つとして知って欲しいと思います。お仕事やプライベートでここ一番という時、ピルに頼ってみてください。