膀胱炎は女性に多い?知っておきたい原因や治療・予防方法

2023.08.23

  • フェムテック

この記事を読んでいるあなたは

  • 膀胱炎を繰り返す原因が知りたい
  • 女性が膀胱炎になりやすい原因が知りたい
  • 膀胱炎の治療・予防方法が知りたい

上記のように考えているかもしれません。

この記事ではそんなあなたに「膀胱炎は女性に多い?知っておきたい原因や治療・予防方法」をお伝えしていきます。

膀胱炎とは

コラム32-2

膀胱炎は、膀胱と呼ばれる器官の炎症です。ほとんどの場合は細菌による感染が原因で、外尿道口から入り込み膀胱内で繁殖することで起こります。

そもそも膀胱とは

膀胱は泌尿器系に属する臓器の一部です。
男女で膀胱の位置は異なり、

  • 男性:恥骨と直腸の間
  • 女性:恥骨と子宮の間

にそれぞれ位置しています。役割としては、腎臓から送られる尿を一時的に貯蔵、一定量になったら体外へ排出して、体内の水分バランスと廃物の排出を調節する器官です。
また、収縮性を持った器官でもあり、尿がない状態の時は小さく収縮し、尿が溜まっていくと膨らむようになります。この時、成人であれば300〜500mlほどの尿を貯蔵することが可能です。

膀胱炎の主な原因

膀胱炎の原因は、そのほとんどが細菌による感染です。細菌は外尿道口から侵入して繁殖しますが、その原因となる細菌は大腸菌が圧倒的に多いとされています。大腸菌は人間や動物の腸内細菌の1つです。大腸以外にも大腸菌は肛門や会陰にも付着しているため、外尿道口から膀胱へと辿りつきやすくなっています。
ですが、大腸菌が膀胱に辿り着いても即座に膀胱炎になるわけではありません。体が健康な状態、つまり細菌に対して抵抗力があれば、増殖は抑えられます。細菌が侵入してきた時に増殖が抑えられずにいると膀胱炎を発症します。

膀胱炎の主な症状

膀胱炎の主な病状は以下の通りです。

  • 排尿時に痛みや違和感が出る
  • 下腹部や出口付近が痛む
  • トイレへ行く回数が普段より多くなる
  • 尿が白濁したり、血が混ざることがある
  • 排尿しても尿が残っている感覚がある

人によって痛みの程度や感じ方は個人差があるため、同じ膀胱炎でも痛みの強さや感じ方が異なります。加えて、これらの自覚症状がすべて起こる訳ではありません。中には無自覚の方もいらっしゃいます。

膀胱炎が痛む原因

膀胱炎が痛むのは、以下のような原因があります。

膀胱の炎症

膀胱炎は膀胱内に炎症が生じる状態です。この炎症によって、膀胱の粘膜や組織が刺激されてしまうため、痛みが生じます。
加えて、炎症によって膀胱の血管が拡張されて組織が腫れるようになります。そうすると、痛みを感じる神経終末が刺激されてしまうので、痛みが出てしまいます。

排尿時の刺激

排尿時に膀胱は縮むようになっています。縮んだ時に、炎症した部位が接触してしまうので、痛みが出るようになります。また、膀胱だけでなく、尿道も炎症を起こしていると排尿時に尿道にも痛みが生じることもあります。

膀胱炎は自然治癒できる?

慢性になりやすい膀胱炎は、軽症であると病院へ行かなくても大丈夫とお考えの方もいらっしゃるでしょう。ここでは本当に膀胱炎が自然治癒可能かを解説していきます。

軽度なら自然治癒する可能性もある

膀胱炎が軽度の場合は、自然治癒することもあります。水分を多く取り、尿を頻繁に排出して細菌を洗い流していたり、生活習慣などを見直して免疫を高めるといったことで3〜4日で治る可能性が高いです。

膀胱炎の初期症状が気になる方は、

  • バランスのよい食事
  • 睡眠時間を確保
  • 下半身を冷やさない
  • アルコールや香辛料を控える

といったことを心がけてみましょう。

自然治癒しなかった場合の病院へ行く目安

3日以上経っても改善の兆しがない場合は、病院に受診することをお勧めいたします。
というのも、膀胱炎から腎盂腎炎になることがあるためです。稀ではありますが、腎盂腎炎は膀胱から腎盂や腎杯、腎臓へ菌が逆流することで起こります。腎盂腎炎の病状は以下の通りです。

  • 膀胱炎の病状が出る
  • 背中や腰に痛み
  • 38度以上の高熱や悪寒
  • 吐き気や嘔吐
  • 全身の気だるさ

痛みなどの症状を放置する期間が長くなると、血液を通して全身へ菌が広がり、敗血症という状態になることがあります。たかが膀胱炎と甘く見ずに、できるだけ病院へ行くようにしましょう。

市販薬では細菌は減らない

市販薬は細菌が増殖するのを抑えられても、「抗生物質」のように細菌が減ることはありません。膀胱炎の初期段階では有効ですが、2〜3日経っても改善が見られない場合は病院へ行き、医師の診察を受けましょう。

また、症状が軽減されたからと言って、薬の服用を途中でやめたりしないでください。病状としては出ずとも、細菌が膀胱の中に残っていることがあるためです。細菌が残っていると、膀胱炎は再発してしまうこともあります。病状が治ってからも服用を続け、水分をしっかりと取り、膀胱炎を繰り返さないようにしましょう。

膀胱炎が女性に多い原因は?

明確な統計はありませんが、女性のうち5人に1人は膀胱炎を発症すると言われています。男性と比較すると5倍以上も発症しやすく、膀胱炎も再発もしやすいです。なぜ膀胱炎は女性に起きやすい疾患なのか?と気になる方もいらっしゃるでしょう。ここでは女性が発症しやすい原因についてお話したいと思います。

男性と比べると尿道が短い

感染経路となる尿道は男女でその長さには差があり、男性がおおよそ20cmであるのに対し、女性は3〜4cmと言われています。膀胱炎の主な原因は、尿路感染です。そのため、男性と比較して尿道が短い女性は、細菌が膀胱へ侵入しやすく、膀胱炎に発症しやすくなっています。
とはいえ、男性も全く膀胱炎にならないという訳ではありません。ただ、女性よりも細菌の侵入が容易ではないことから発症率が低い傾向にあるというだけです。

膣や肛門に尿道が近い

女性は尿道の近くに、「膣」や「肛門」が近い場合がほとんどです。先ほども記しましたが膀胱炎は尿路感染が多く、膣や肛門から尿路感染しやすいため、女性は膀胱炎に発症しやすくなります。

妊娠や出産で排尿が難しい

女性は妊娠すると、体内の女性ホルモンのバランスに変化が生じたり、尿道周辺が胎児によって圧迫されることがあります。その結果、排尿が難しくなり、膀胱へ侵入した細菌が滞留、繁殖しやすくなります。

また、妊娠中は母体の免疫力は落ち込みがちです。よって病状がない時でも、「無症候性細菌尿」といって妊婦の15%が尿路感染症にかかる可能性があります。普段大したことのないように思われている膀胱炎ですが、適切な治療を受けないと「早産」や「流産」といったリスクを上昇させてしまいます。早めにかかりつけ医に相談をすることでそうしたリスクを下げることができます。妊娠中はより一層注意するようにしましょう。

生理用品の長時間着用

女性の中には、日常生活の中で生理用品を取り替えることが難しいタイミングもあるでしょう。ですが、生理前〜生理中は免疫が低下しやすく、経血を介して雑菌が繁殖や侵入しやすい状態です。生理用品をつけているから膀胱炎になりやすくなる訳ではありませんが、こまめに交換して衛生面には気をつけましょう。

膀胱炎の種類

一口に膀胱炎と言っても様々な種類が存在しています。一般的には急性膀胱炎が女性に多いとされていますが、その他の膀胱炎の原因や病状もあります。ここでは具体的な種類を解説したいと思います。

急性膀胱炎

細菌が原因で炎症しているとされているケースです。頻尿や尿意切迫、残尿感や排泄痛といった症状は出ますが、発熱はありません。
また、女性に多い疾患ですが、男性も発症することがあります。その場合、前立腺炎や尿道炎など膀胱以外の炎症が起こっている可能性も考えられます。前述の通り、女性は繰り返しやすい疾患ですが、原因を特定、治療や予防をすることで再発の頻度は低くなります。

慢性膀胱炎

急性膀胱炎が慢性化しているケースと他の疾患の病状として出ているケースです。急性膀胱炎と同様な症状が出ますが、急性膀胱炎よりは病状が弱くなります。
病状が弱いために自覚症状が薄く、放置してしまう方も少なくはありません。ですが、慢性膀胱炎は、下記のような疾患が潜んでいる可能性があります。

  • 前立腺肥大症
  • 膀胱結石
  • 糖尿病
  • 膀胱がん

この場合、原因である疾患が取り除かれるまでは、繰り返してしまうことも多く、治りにくい疾患です。その他にも抗がん剤治療の薬剤が原因で免疫が低下していると、発症することもあります。

また、閉経後の女性に多く見られる疾患でもあります。本来、女性ホルモンのおかげで膣内は弱酸性に保たれて、細菌や雑菌が増えにくい環境となっています。ですが、女性ホルモンが低下する閉経後は、膣の自浄作用も低下しやすく、細菌や雑菌が増えやすくなるため、発症しやすくなるのです。
どの原因にしても自覚症状が薄いので、少しでも変化に気づいたら病院で診察を受けるようにしましょう。

間質性膀胱炎

原因不明の炎症が膀胱に起こるケースです。膀胱内の「間質」と呼ばれる部分に炎症が起こります。このケースでは、感染が原因ではないので尿自体に異常が見つからず、抗生物質は効きません。症状としては、強い尿意により1時間のうちに何度もトイレへ行ったり、膀胱に強い痛みを感じたり、痛みが尿道や下腹部に広がるといったことがあげられます。

加えて、はっきりとした原因が分かっていないため、基本的に完治はありません。よって病状を一時的に緩和する寛解という状態を目指す方がほとんどです。継続的に注意することも多く、食事や飲み物には特に気をつけなければなりません。

出血性膀胱炎

膀胱全体が出血を伴うケースです。急性膀胱炎の症状に加えて、尿に血液が混じる症状が見られます。原因としては、

  • ウィルスや細菌
  • 薬剤
  • 放射線
  • がん

といったことがあげられます。膀胱には血管が多いため、できた血液の塊が血管を塞ぎ、重篤化することもあります。

クリニックや病院での膀胱炎の治療方法

クリニックや病院などでは抗生剤の投与が主な治療方法になります。
もし、以下のような頻度で膀胱炎を繰り返し発症するようなら、別の病気が潜んでいる可能性があります。

  • 1年以内:3回以上
  • 6ヶ月以内:2回以上

また、抗生物質を服用しても治療の効果が見られない場合も同様です。再度検査を受けるようにしましょう。

お家でできる膀胱炎の療養・予防方法

つらい膀胱炎の療養や予防には以下の方法があります。

水分を多くとる

水分を多くとることで、膀胱に侵入した菌を洗い流すことができます。

では、具体的にどのくらい水を飲めば良いか疑問に思われるかもしれません。成人ならば、大まかに体重1kgあたり30〜35mlの水分をとると良いとされています。体重が60kgの場合は1日に1800〜2100mlの水分を必要とします。ただし、性別や年齢などを加味した水分目安はありません。これらの水分摂取量の目安は個人の体質や体調、状態に合わせて適切な水分量を確保することが重要です。

また、コーヒーや紅茶といったカフェインの多い飲み物は接種した量以上に尿などの形で排出されます。脱水症状を起こしやすくなるので、なるべくカフェインをとりすぎないように気をつけてください。

トイレを我慢しすぎない

仕事や子育てなどで日常生活が忙しく、トイレを我慢したり、回数が少ない方がいらっしゃるでしょう。しかし、トイレに行くのを我慢して尿が溜まった状態だと細菌が繁殖しやすくなります。前述のように、水分をとって新しい尿を作り出し、なるべく尿を排出して細菌が少なくなるようにすることが大切です。トイレを我慢せずに、細菌の繁殖を防ぐようにしましょう。

性交渉後シャワーを浴びる・排尿をする

性行為が原因で膀胱炎になることもあります。理由は、尿道の短さや膣や肛門が近いことと合わせて、性行為中の摩擦や刺激によって尿道口が刺激されたり、肛門近くの細菌が性器に移動しやすくなって、細菌の侵入が容易になるためです。

ですが、細菌が侵入してもシャワーを浴びたり、排尿することで尿道内に滞留していた細菌を排除、膀胱炎のリスクが減少します。雰囲気を壊してしまわないかと気にされる方もいらっしゃるでしょうが、2人でシャワーを浴びに行けば雰囲気を崩さなくても済むかもしれません

トイレットペーパーの使い方に気をつける

急性膀胱炎の原因のほとんどが大腸菌であることは前述しましたが、トイレットペーパーを介して菌が肛門から尿道口へ移動することがあります。トイレットペーパーを後ろから前へ拭いてしまう習慣がある方は、「前から後ろ」を心がけましょう。

こまめに生理用品を交換する

生理用品の長時間使用は、膀胱炎以外の感染症リスクを高めてしまいます。ナプキンや織物シートを使用する際は、なるべくこまめに取り替えましょう。そうすることで尿道や膣の健康を保つことができます。

特に更年期以降は、女性ホルモンが低下することから膣粘膜が萎縮しやすく、おりものの量が少ない状態です。それまで膣の自浄作用で守られていましたが、菌の繁殖を抑える力が低下してしまうので、膀胱炎を繰り返しやすくなります。そのため、生理用品を長時間使用すると、膀胱炎を発症するリスクがより高まります。

睡眠不足やストレスに気をつける

免疫力が落ちていると、膀胱炎にかかりやすくなります。
睡眠不足の時や疲れが溜まってると、普段はなんともなくともウィルスや細菌に対する抵抗力が弱まります。そのため、抵抗力を高めることも大切です。しっかり睡眠をとり、食生活も栄養バランスがとれるように努めましょう。

まとめ

膀胱炎は繰り返しやすく、女性の場合だと解剖学的にも発症しやすい、身近な疾患と言えるでしょう。それだけに、病院へいかなくても大丈夫だろうと思われる方もいらっしゃるかと思います。ですが、繰り返す頻度が高かったり、長期化している場合には医療機関での治療をするようにしてください。

また、繰り返さないためには適切な予防方法をとることも重要です。普段から自身のケアを心がけましょう。

この記事を監修した医師

ヴェアリークリニック院長

井上 裕章

医師プロフィール

東大医学部卒業後、外科専門研修を修了し、外科専門医を取得。その後、性器・生殖器官や大腸肛門を含む骨盤臓器、および下肢の疾患を専門に外科診療にあたっているうちに、下半身の美容的な悩みを抱える患者さんの相談を多く受けるようになる。しかし、下半身美容を専門的かつ総合的に診療している美容医療機関は存在せず、それぞれの分野に分かれて別個に診療されていることを知る。それでは、最善の治療が提供できないと考え、各分野の美容系クリニックでの修練を重ねたのちに、自らの骨盤臓器と下肢に対する外科治療の経験および知識を生かして、下半身に関する総合的かつ専門的な美容医療を提供するため、veary clinic を開設した。