尿漏れとは?種類やそれぞれの原因と対策について解説
2023.04.21
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女性器形成
この記事を読んでいるあなたは
- 尿漏れとはどんな種類があるのか知りたい
- 病院でどのような検査をするのか知りたい
- 尿漏れの対策を知りたい
上記のように考えているかもしれません。
この記事ではそんなあなたに「尿漏れの原因とは?女性に尿漏れが多い理由」をお伝えしていきます。
尿漏れとは何か?
尿漏れとは、自分の意思と無関係に排尿してしまう症状のことです。医学の用語では「失禁」と言い、女性に多い症状とされています。こうしたお悩みはデリケートであるため、周囲に相談できない方も多いでしょう。ここでは、尿漏れや尿が生成される仕組みについて解説します。
前述の通り、「自分の意思と無関係に排尿してしまう症状」を尿漏れと言います。日常生活に影響を及ぼすこともあり、例に挙げるならば、
- 尿漏れが怖くて遠出できない
- 旅行に行きたくない
- 下着の汚れが気になる
- トイレの位置を確認しておかないと不安になる
など悩まれている方も多いでしょう。出産を機に症状が気になりだしたり、更年期を前に気になったりと、尿漏れは男性よりも女性に多い症状とされています。
しかし、必ずしも年齢やライフステージの変化だけが、尿漏れの原因ではありません。ベストな対策をとれるよう、まずは尿漏れの原因を知り症状と向き合うことから始めていきましょう。
尿が生成される仕組みと尿漏れ
尿が生成されてから排尿に至るまでの流れは以下の通りです。
- 尿は腎臓で作られ、一定の量まで膀胱で貯蔵される
- 末梢神経が感知し尿意を感じる
- トイレに行き、排尿行為に移る
膀胱とは、収縮性のあるしなやかな筋肉でできており、尿が溜まると容積が増える水風船のような構造です。
通常、尿の流れを調節する筋肉の尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)が緊張状態にあるため、膀胱に尿が溜まっても無意識に排尿されません。排尿しようと意識が働くと、膀胱が収縮します。
また、尿道括約筋がゆるむと排尿される仕組みです。尿漏れは、これらの仕組みの途中の工程で異常が生じてしまい、ふとした瞬間に尿が漏れてしまうことを指します。
尿漏れのタイプ
ひとくちに尿漏れといっても、症状はさまざまです。ここでは、それぞれの症状の特徴を紹介します。
腹圧性尿失禁
お腹に力が入り、腹圧が上がる時に尿漏れしてしまうタイプです。特に、女性によくみられる症状と言われています。
以下のシーンで尿漏れを感じたら腹圧性尿失禁の可能性があります。ご自身でチェックしてみてください。
- 咳やくしゃみ、笑ったとき
- ふと立ち上がったとき
- 重いものを持ち上げたとき
- 長期間歩いているとき
- ゴルフやテニスなどのスポーツをしているとき
- 階段を上り下りするとき
膀胱内に溜まった尿が腹圧により押し出されるタイミングで尿漏れしやすいことが特徴です。
切迫性尿失禁
突然尿意を感じ、我慢できずに尿が漏れるタイプです。
以下のような症状を感じたら切迫性尿失禁かもしれません。
- 急にトイレに駆け込みたくなる
- トイレが異常に近くなる
このように、うまく膀胱に尿を溜められない状態を過活動膀胱と言います。40歳以上の日本人女性のうち10人に一人が過活動膀胱を経験し、そのうちの半数は、切迫性尿失禁を経験しているといわれるほど多くの方が悩む症状です。長時間の移動や、トイレがすぐないような外出時に不安を抱えている女性も多いことでしょう。
また、腹圧迫性尿失禁と切迫尿失禁が混在する「混合性尿失禁」という症状もあり、状態に応じて適した治療は異なります。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
自分の意思で排尿ができずに、少量ずつ漏れ出てくるタイプです。溢流性尿失禁には、以下のような症状があります。
- 排尿時に完全に排尿できないため、尿が滴り続けることがある
- 尿が漏れることがあるため、尿量が少ないと感じることがある
- 膀胱内に溜まりきらなくなった尿がチョロチョロと漏れだしてくることがある
- 排尿するまで時間がかかる
- 残尿感がある
- 排尿するときに力まないと出ない
溢流性尿失禁は、尿が出にくくなる排尿障害が前兆としてあります。加えて、全て排尿しきれないため細菌が感染する尿路感染症、もしくは腎臓から膀胱へうまく尿が流れないため、腎不全などの合併症を引き起こすリスクもある症状です。
機能性尿失禁
他のタイプと異なり排尿する機能の問題ではなく、認知症やその他の理由で身体が思うように動かないことが原因で起こる症状です。特徴として以下のような症状があります。
- トイレに行き忘れる
- 歩行困難のためトイレまで間に合わない
- 排尿動作に時間がかかり、結果尿漏れしてしまう
- 膀胱がいっぱいになっても、感覚が認識できない
この場合は、介護や生活環境の見直しが求められます。
症状別で見る【尿漏れの原因】
上記で挙げた症状は、身体的な要因や疾患が原因で引き起こされます。それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。
腹圧性尿失禁の原因
腹圧性尿失禁の原因は、骨盤底筋が傷つき弱まることです。
具体的には、
- 妊娠・出産
- 加齢
- 女性ホルモンの減少
- 肥満
- 便秘
などがあります。出産の回数が多いほど、骨盤底筋が傷つくリスクは高まりますし、排便の際にいきむ回数が多い方も骨盤底筋を傷つけるリスクの高い方と言えます。
というのも通常、骨盤底筋が膀胱や尿道を支えています。ですが、その骨盤底筋が何らかの影響を受け傷ついたり、弱まったりすると尿道をうまく締められなくなるといったことが起こります。
切迫性尿失禁の原因
切迫性尿失禁の原因は、脳と膀胱を結ぶ尿道にトラブルが起こる「神経因性」と、それ以外の「非神経因性」があります。
神経因性とは、パーキンソン病などの脳の障害や、脊髄損傷・多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症のような神経系のトラブルです。排尿の調節がうまくいかなくなり、尿漏れを起こします。
一方、非神経因性では、加齢や出産による骨盤底筋のトラブルや、膀胱が膣壁(ちつへき)より飛び出てしまう膀胱瘤(ぼうこうりゅう)・子宮脱などの骨盤臓器脱が原因です。ですが、こちらも排尿がうまく調節できないといった事態が起こります。
どちらにしても、原因は複雑に絡み合っていることが多く、治療も必要になってきます。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁の原因
排尿障害を起こす原因の一つに前立腺肥大症があるため、男性に多い原因とされています。しかし、その他にも溢流性尿失禁の原因となる要因は多々あり、女性にも起こりうる症状です。
- 排尿運動を促す末梢神経にダメージが加わる糖尿病
- 子宮にできる良性腫瘍の子宮筋腫
- 妊娠・出産
- 加齢
- 肥満
- 子宮脱や膀胱瘤
- 脊髄の機能が低下する腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 直腸癌や子宮癌の手術後など、膀胱の周りにある神経機能が低下している場合
一度ダメージを受けた神経を元の状態に戻すのは難しいとされているため、神経障害が原因とされる症状は治療が難しいケースもあります。
機能性尿失禁の原因
- 尿意を認識できない方
- 寝たきりでトイレに行くのが困難な方
- 身体運動機能や運動機能の低下してる方
- 認知症
などが原因で起こります。こちらは介護や生活環境の整備を必要とするレベルです。
女性が尿失禁で悩む理由
尿漏れで悩む女性が多いのは、身体的特徴やライフステージの変化や加齢によるものなど尿漏れになりやすい症状が複合的に絡みあっているためです。ここでは、女性が尿漏れを起こしやすい理由を5つ紹介します。
理由1:尿道が直線で短いため
男性の尿道はS字カーブを描いているため、尿漏れが起こりにくい構造です。一方女性は男性よりも尿道が短く、かつ直線的なため少し力を入れるだけで、尿漏れしやすいと言われています。
理由2:出産で骨盤が開きやすくなっているため
出産経験がある女性は、尿漏れしやすくなることが分かっています。それは出産するときに産道が開くと同時に、骨盤も開いてしまうためです。
骨盤が開くと、膀胱や子宮、腸などの内臓を支えている骨盤底筋が傷つき、伸びてしまうため臓器を支えられなくなります。すると膀胱が刺激され尿意を調節できなくなり、尿漏れにいたります。
また、妊娠中においても胎児の重みで骨盤底筋がしなり、尿漏れを起こしやすくなります。そのため、妊娠・出産を経て尿漏れに悩む女性は多いです。
理由3:加齢により骨盤底筋がゆるむため
加齢により筋力が弱まり、骨盤底筋にゆるみが生じ尿漏れを起こすこともあります。また女性ホルモンの低下も骨盤底筋のゆるみの要因です。
女性ホルモンの中のエストロゲンというホルモンは、筋肉にハリを持たせる役割があることが分かっています。そのため、更年期や閉経前で女性ホルモンの分泌量が低下すると、尿漏れを引き起こしやすくなります。
理由4:ストレスが原因で自律神経が乱れているため
身体の変化だけでなく、精神的負担から尿漏れを起こす場合もあります。ストレスなどが要因となり膀胱が収縮してしまうことが原因です。過度に緊張や不安を感じると自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経のバランスがうまく保てなくなると脳への伝達がうまくいかなくなります。そのため、過剰に尿意を感じることもある他、過去の排せつに関するトラウマから、身体が条件反射し急に尿意を感じる場合もあります。
尿道や膀胱に異常がなくとも、何度もトイレにいく状態であれば、精神的な要因が無いか考えてみましょう。
理由5:肥満により膀胱圧迫しているため
肥満が原因で血流悪化を起こし、尿失禁につながることもあります。尿道の周りにある筋肉や神経にダメージを受け、機能が弱まることが原因です。さらに加齢により基礎代謝が落ちると内臓脂肪もつきやすくなり、膀胱が圧迫されることで尿漏れのリスクも高まります。
尿漏れは骨盤臓器脱の可能性!?
骨盤臓器脱とは、骨盤底筋の働きが弱くなることで、骨盤内にある膀胱・子宮・直腸などの内臓が膣の出口から飛び出してしまう疾患です。性器脱と呼ばれることもあります。
また、骨盤臓器脱を引き起こす原因は加齢や出産、肥満や便秘などがあり、年代が若くても発症する可能性のある疾患です。これらの症状が発覚した場合は、手術が必要となります。尿漏れを軽視せず、医師の診断を受けることも大切です。
病気・加齢・身体的特徴以外の尿漏れの原因
直接の原因とはいえませんが、膀胱を刺激し尿意を強くすることで尿漏れを誘発することもあります。ここでは、そうした原因や要因の解説をします。
1日の水分摂取量の不足
1日の水分摂取量は1000ccがおおよその適量です。しかし、頻尿が気になり水分の摂取を控えていると膀胱に溜まる尿の量が少なくなります。すると、尿が濃くなると返って尿意が強くなりますが、少ない量の排尿をくり返す習慣が進んでしまったことが原因です。
身体を冷やす食べ物の摂取
身体を冷やす食べ物は尿漏れを誘発してしまう可能性があります。
例えば、
- きゅうり
- レタス
- ナス
などの夏野菜などです。さらに、利尿作用のあるカリウムを多く含む、
- バナナ
- キウイ
- メロン
などの摂りすぎは尿の回数を増やすリスクもあります。
また、身体の冷えは便秘の原因です。便秘になると膀胱が圧迫され、尿漏れしやすくなるため、大根やレンコン、ごぼうなどの根野菜を積極的に取り入れて、身体を温めお通じのよい食生活を意識しましょう。
尿漏れを悪化させる排尿習慣
排尿する時、意識的に力み具合を調節している方は少ないでしょう。しかし、その無意識に習慣化している排尿の方法が、症状を悪化させている可能性があります。
以下をチェックし、一つでも当てはまるものがあれば排尿の習慣を見直しましょう。
- 排尿時はお腹に力を入れ、絞りだすようにしている
- 尿意を感じなくても、とりあえず何度もトイレに行っている
- 排尿が終わっても、さらにお腹に力みを加え尿が残っていないか確認している
- 便秘気味で、毎日トイレで力みがち
排尿するときは力まず、骨盤底の力を抜くことが大切です。
尿漏れを感じたときの対策
基本的な治療は病院で行われますが、治療にあわせて日常生活の見直しも大切です。特にトレーニングや食生活の改善は成果が出るまでに時間がかかるため、1日でも早く始めていきましょう。なお、最適な治療方法はかかりつけの医師に相談してください。
骨盤底筋のトレーニング
女性で特に多い症状の腹圧性尿失禁には、骨盤底筋を鍛える方法が効果的です。鍛え方にはピラティスや膣球、バランスボール、専用のトレーニング器具など方法はさまざまありますが、器具なしでも簡単に鍛えられます。椅子に座ったまま、お腹に力を入れずに肛門を閉めながら膣と尿道をギューッと締める動作を10回くり返しましょう。1日に数回分けて5セット以上が目安です。
<膣トレの詳しいコラム>
膣トレとは?骨盤底筋の基礎知識や膣トレのやり方と効果について
膀胱トレーニング
尿意がきても我慢し、膀胱を広げるトレーニングです。尿意がきてもすぐに排尿せず、我慢する時間を徐々に増やしていきます。骨盤底筋のトレーニングと併用すると効果的です。
生活習慣の改善
尿漏れを改善するためには、内臓脂肪を減らし膀胱への刺激を軽減することも大切です。日頃の食生活を見直したり、適度な運動を取り入れて健康的な身体を手に入れましょう。
なお、日頃から膀胱を刺激するカフェインやアルコール飲料を摂取している方は、なるべく控えることもおすすめです。
薬物療法
症状によっては薬物治療を行うこともあります。尿道括約筋を収縮させ、腹圧がかかったときの尿漏れを防ぐ薬です。ただし補助的な薬となるため、骨盤底筋トレーニングと併用して取り入れる必要があります。
尿スリング手術(TVT手術、TOT手術)
尿スリング手術とは、メッシュテープで尿道を吊り上げ、尿漏れを防止する治療方法です。術式にはTVT手術とTOT手術があり、症状の程度や検査結果によって分けられます。
まとめ
尿漏れは、自分の意思とは関係なくふとした瞬間に排尿してしまう症状です。デリケートな問題であるため、周囲に相談しにくい悩みかもしれません。しかし、症状と向き合い早めにケアすれば、旅行や長時間の乗り物移動で常にトイレの不安に悩まされることも少なくなるかと思います。
また、尿漏れにもタイプがあり、症状にあわせて原因が異なります。まずは症状に合わせた原因を知り、改善に向けケアを始めていきましょう。